関西の食文化に欠かせない調味料である「ソース」。
そのなかでも特にディープな街・長田に、全国からソース好きが集まる聖地があるのをご存じでしょうか?阪神電車・高速長田駅を出てすぐ、賑わいを見せる「長田神社前商店街」の一角に店を構える「ユリヤ」です。
今回は、神戸の地ソースを中心に取り扱うユリヤの店主・中島さんにお話を伺いました。
長田でお店を続ける理由やソース選定のこだわり、初心者に向けた“マイソース”の選び方など、気になるあれこれを深掘りしています!
関西の食文化に欠かせない調味料である「ソース」。
そのなかでも特にディープな街・長田に、全国からソース好きが集まる聖地があるのをご存じでしょうか?阪神電車・高速長田駅を出てすぐ、賑わいを見せる「長田神社前商店街」の一角に店を構える「ユリヤ」です。
今回は、神戸の地ソースを中心に取り扱うユリヤの店主・中島さんにお話を伺いました。
長田でお店を続ける理由やソース選定のこだわり、初心者に向けた“マイソース”の選び方など、気になるあれこれを深掘りしています!
初めて訪れたにも関わらず、どこか懐かしい雰囲気が漂う店内。まるで実家に帰ってきたかのような安心感がありました。奥から今にも「おかえり」という声が聞こえてきそうです。
お店に入って一番目につくであろう場所には、棚いっぱいのソース、ソース、ソース。整然と、しかし個性豊かに並ぶソースの数々には圧倒されます……!
「たくさんあるソースの中から、運命の1本が見つかるかも」という期待感が膨らむばかりです。
最初からソースをメインで置いていたわけではないんです。時代のニーズに合わせながら、野菜やお酒、お歳暮品などの食品類を販売していました。
ソースを置き始めたのは、阪神淡路大震災のあと。長田から避難した方から「あそこのお好み焼き屋で食べていたあのソースが忘れられへんのやけど、こっちにはないんや。送ってくれへん?」と頼まれたのが始まりです。
地元に住む私にとっては「あ、ないんや」と驚きで。“故郷の味”が欲しくなることって、やっぱりあるんだなと思いました。それからもいろいろな方から「あのソースが欲しい」と連絡をいただくようになり、徐々に種類が増えて今に至ります。
祖父の代から続く歴史と、長田への思い入れがあるからですかね。地元の人たちにとっても僕にとっても大事な場所なので、ここで続けています。
当時は地元の方がほとんどでしたが、最近はメディアに取り上げられる機会が増え、全国各地からお客様が訪れるようになりました。
自分好みの“マイソース”を見つけて購入し、店の前で記念写真を撮る方も。これだけ多くのソースが集まる店は珍しいため、ある意味で「ソース好きにとっての聖地」になっているのかもしれません。
160種類くらいです。地元・神戸を中心に、ソース文化が根付いている大阪、京都、岡山などのソースを置いています。
子どもの頃からあらゆる神戸のソースを口にしてきているので、「あのメーカーのあのソースを置きたい」といったように、元々知っているケースが多いです。休日に何気なく訪れたお好み焼き屋や、旅行先でふらっと入ったお店で惹かれたソースがあれば、直接メーカーを尋ねて交渉することも。
明確な基準はないものの、おいしいと感じる「一定レベルのソース」を厳選しています。
前提として、「地元のソース文化をなくしたくない」という気持ちが強いんですよ。それが神戸のソースが多くなっている理由でもあって。実際にコロナ禍以降、生産停止になってしまったメーカーもあるので、その想いは一層強くなっています。
バランスが取れていて全体のクオリティが高いソースも素晴らしいのですが、それ以上にどこか(酸味や辛味など)がグッと尖っていて、特徴のあるソースには惹かれてしまいます。
たとえば、ニンニクパウダーではなく、刻んだニンニクがしっかり入っていてパンチがあるソースなどはたまらなく魅力的です。
元を辿ると、神戸港の開港がきっかけのようです。多くの外国人が神戸を訪れ、徐々に洋食文化が広がったのが明治頃。当時は豊富な香辛料が輸入されていたのですが、阪神ソースがそれらを使って洋食に合うウスターソースの製造を始めたのがルーツとされています。
その後、お好み焼きなどの「粉もん文化」が発展し、ソースは神戸をはじめとする関西の食卓に欠かせない存在となりました。
現在扱っている主な神戸のソースメーカーは、オリバーソース、ばらソース、ブラサーソース、プリンセスソース、ニッポンソース、阪神ソースの6つです。
これらのメーカーからは、ウスターソース、とんかつソース、お好みソース、ウスターソースの製造過程でできる沈殿物を使った辛口のどろソースなど、多種多様な商品が製造されています。メーカーごとにスパイスの調合や野菜・果物の使い方などが異なるため、味わいもさまざまです。
たとえば、日本最古のソースメーカーである阪神ソースは、洋食に合う上品でバランスの取れた味わいが特徴です。一方、プリンセスソースやニッポンソースは刻みニンニクを使用しているため、パンチがある個性的な味わいとなっています。
「おいしいと聞いたから」や「神戸といえばどろソース」といった選び方も良いですが、味覚は人それぞれです。
私としては「ソースは日常に馴染む調味料であって欲しい」という思いがあるので、普段作る料理から選ぶことをおすすめします。揚げ物が多いならとろみのあるソース、辛いもの好きならスパイシーなもの、粉ものを作るなら定番ソース、などと考えてみましょう。
そこから、辛口か甘口か、バランス型かなど、好みに合わせて絞り込むと、きっとあなたにぴったりの“マイソース”が見つかるはずです!
今回は、店主の中島さんに初心者にもぴったりな「万能の一本」と、少し通好みだけど試してみてほしい「個性派の一本」をセレクトしていただきました。定番から意外どころまで、プロならではのおすすめの組み合わせを教えてもらったので、実食レビューします!
フルーティーで華やかな香りが広がる「プリンセスソース」のウスターソース。さらりとした粘度が特徴です。今回は中島さん一押しの「焼きそば」でいただきました!
まず心地よい酸味、次いでまろやかな甘みが追いかけ、スパイスのキレが効いたすっきりした後味に!特筆すべきは、刻みニンニクのパンチのある風味。これが全体の味を引き締め、いつもの焼きそばが専門店のような深みのある味わいに変わります。
揚げたての串カツやトマトにかけるのもおすすめだそうです。
「ブラザーソース」のどろソースは、濃厚な粘度と食欲をそそるスパイシーな香りが特徴。色は深みのある焦げ茶色です。意外な食べ方として、「甘口カレーに少量かける」方法を教えてもらいました!
口に入れると、まずガツンと凝縮されたスパイスの辛味が広がり、遅れて複雑な旨みと微かな酸味が追いかけます。後味は非常にパンチがあり、カレーに深みと刺激的な辛さがプラスされました。
どろソースは、アラビアータソースに加えたり、お好み焼きや焼きそばに辛味をプラスしたりなど、「ちょい足し」使いが基本だそう。ソースの秘めたる可能性と奥深さを感じます……!
ユリヤさんの訪問を通して、神戸ソースの多様性と奥深さを感じるとともに、「地元に根付いた調味料の尊さ」を再認識しました。
インタビューの最後、「ぜひ地元のソースと食べ比べして、神戸ソースの魅力を肌で感じて欲しい」と締めた店主の中島さん。この言葉に「神戸のソース文化をなくしたくない」という思いが詰まっていたように感じました。
ぜひ次の休日にふらりと立ち寄り、あなただけの特別な一本を見つけてみてはいかがでしょうか?
店舗情報
住所:〒653-0003 兵庫県神戸市長田区五番町8丁目1−6
アクセス:阪神電車・高速長田駅から徒歩3分
電話番号:078-577-0231
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜日
公式サイトURL:https://www.yuriya.co.jp/
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