信州味噌は全国シェア1位であることをご存じでしょうか。信州味噌の作り手で「感動していただける味噌屋を目指す」を掲げている山万味噌。
何ごとにおいても、効率化が重視されがちな現代。山万味噌は、味噌本来の風味を届けるために手間を惜しまない味噌づくりをしています。三代目当主の小松豊幸さんは、さまざまなお仕事を経て味噌屋を継がれた方です。
小松さんが三代目当主になったきっかけ、味噌を通して感動を届けるに至った思い、こだわりを紐解いていきます。
信州味噌は全国シェア1位であることをご存じでしょうか。信州味噌の作り手で「感動していただける味噌屋を目指す」を掲げている山万味噌。
何ごとにおいても、効率化が重視されがちな現代。山万味噌は、味噌本来の風味を届けるために手間を惜しまない味噌づくりをしています。三代目当主の小松豊幸さんは、さまざまなお仕事を経て味噌屋を継がれた方です。
小松さんが三代目当主になったきっかけ、味噌を通して感動を届けるに至った思い、こだわりを紐解いていきます。
信州味噌は、戦国大名・武田信玄が戦のために軍につくらせたことがはじまりといわれています。主要な原料である大豆の産地、味噌づくりに適した気候の長野県。江戸時代になると、庶民にも味噌が行き渡るようになりました。
さらに、岡谷市に味噌専門の研究所ができ、地域一体となって技術力を向上。長野県独自の酵母菌の開発・培養、製造条件の研究によって、天候に左右されにくく「いつ食べても変わらない味噌」を速くつくれるようになりました。
今でも、約100社で構成される長野県味噌工業協同組合連合会では、味噌づくりの勉強会など、信州味噌を発展させる取り組みを行っています。
日本にはさまざまな種類、特徴をもつ味噌がありますよね。その中でも信州味噌は、風味のクセが少ないです。しょっぱすぎず、甘すぎない。いわゆる”大衆の風味”として受け入れられた理由だと思います。
私が三代目になって数年経過した頃、山万味噌は経営的に苦しい状況でした。さらに追い込むように、売上や利益ばかりに目を向けすぎて、がんじがらめでした。
そんな私を見かねた妻が、旅行に連れ出してくれました。ただ、旅先の名物に食物アレルギーをもつ私は、楽しめるのか心配で…。
その思いとは裏腹に、宿泊先では名物を使用しない私だけの特別メニューを提供してくれたんです。おかげさまで食事を満喫できました。こんなことは当たり前と思われるかもしれません。でも、当時は食物アレルギーの認知も対応力も、今とは比べものにならなかったように思います。
翌日、宿を出発するときに雨が降っていました。傘を持っていない私たちを見て、従業員の方が、宿の玄関から車まで傘をさしながら付き添ってくれたんです。宿の玄関から駐車場まで、目と鼻の先の距離ですよ。
「これだ!」と思いました。
普通のことをしていても「感動」は生まれません。相手のことを思い、一生懸命になる。その結果が幸せな気持ちや感動に繋がると考えています。
従業員には、売上目標を課していません。お客様に「ありがとう」と、喜んでもらうためには何をすべきかを考え、行動することに目を向けてもらっています。
長野県には、大手や個人経営の味噌屋が約100社あります。知名度が抜群の大手メーカーと同じことをしていても、山万味噌は生き残れません。
規模が小さい山万味噌だからこそ、できることはないか。辿り着いた答えは「手間をかけておいしい味噌をつくること」「お客様一人ひとりに向き合いながら商品を届けること」です。
山万味噌は、先代でたたむ予定でした。その空気を察した多くの方から「山万味噌はおいしいからなくさないでほしい」と、声をかけていただきました。特に親戚には泣きながら頼まれまして…。「山万味噌を失くしてはいけない」という使命感がうまれましたね。
経営難でしたし、苦しいこともありました。でも、不思議と家業を継いだことに後悔はしていません。
きっと、先代がまったく口を挟まず、私のチャレンジを見守ってくれたからだと思います。教えてほしいことは山ほどある。でも、私が質問しても答えてくれないんですよ。答えは自分で探すしかない、夢中になって取り組んできました。
「おいしい味噌はある、どうやって届けるか」
私にのしかかっていた問いです。東京に行ってみたら光が見えるかもしれない。飛び込み営業をはじめました。断られてばかりでしたが、あるお店だけ親身になって話を聞いてくれたんです。
相談相手ができたことで、届け方のアイデアが広がっていきました。たとえば、試食販売の際に「山万味噌に込めた思い」を手紙にして添えたり、お客様に必要な分だけお届けできるように量り売りをしたり、新たな取り組みをしていきました。
味噌づくりについては、一代目から変わっていません。今も変わらず木桶を使い、同じ製法で味噌をつくり続けています。
よりおいしい味噌を届けるために、原材料選び、麹づくり、そして味噌になるまでのすべてに責任をもつ「責任醸造」を導入しました。
厳選した大豆・米・塩と山万味噌にしかない酵母菌でできた味噌です。まず大豆は、大豆農家、豆腐や納豆の製造者と一緒に「大豆の会」を立ち上げ、生産者がお互いに協力できる取り組みをはじめました。
ひとことで大豆といっても、製造するものによって重要視される点が異なります。納豆屋が求めるのは小粒、豆腐屋は中粒、味噌屋は大粒と、異なる製造者が協力することによって、大豆を余すことなく使えるんです。
さらに、実際に大豆を育てている農場に出向いたり、豆腐屋がつくった「おから」を肥料に使ったり、大豆づくりにも積極的に関わっていきました。
また、米は信州産コシヒカリ、塩は昔ながらの製法でつくられた天日塩を選んでいます。味噌の発酵と熟成を促すために「種味噌」も。種味噌とは、先につくった山万味噌のことです。いわゆる先輩味噌ですね。長野県独自で培養された酵母ではなく、山万味噌にしかない酵母菌です。
厳選した原材料、山万味噌独自の酵母菌で、王道の味噌をつくることに挑戦しました。
私たちが味噌に込めた思いを直接届けているからか、お客様も私たちに声を届けてくださいます。
たとえば、「また味噌を買いに来たよ」と、直営店に足を運んでくださるお客様。商品を欠品させてしまったときに「我が家の味噌がなくなりそうだから、早くしてもらわないと困る!」と、会社までお電話くださるお客様。待っていただいている人たちの存在を感じています。
従業員一同、お客様からの声に励まされ、やりがいを感じています。
はじめてのお客様には、「蔵出し量り売り 発芽玄米味噌」を召し上がっていただきたいです。
うまみ成分である、アミノ酸を多く含んでいます。出汁をとらなくても、豆腐やねぎ、味噌だけで、おいしい味噌汁ができます。蔵出し味噌は「大豆のつぶつぶ感」「玄米のぷちぷち感」があり、食べ応えがありますよ。
味噌汁の他には、きゅうりなどにそのままつけて食べていただくのもおすすめです。
「十二割糀 木桶仕込み」は、やわらかい味わいの味噌です。シンプルな味噌汁をつくることができます。具材は、油揚げ、ねぎ、大根、ジャガイモ、わかめがおすすめ。酢味噌、ゆず味噌など、調味料としても活用いただけます。
豚汁など具だくさんの味噌汁、鍋ものを食べたいときには、「信濃の国 発芽玄米味噌」がおすすめです。
それぞれ風味の特徴が異なるため、数種類購入され、シーンに応じて使いわけている方が多いですね。味噌は冷凍庫で保管していても凍らないため、一度に数種類を購入いただいても大丈夫ですよ。
これからも変わらず味噌をつくり、届け続けていきたいです。私は、即席味噌ではなく、生味噌を届けることに意味があると信じています。スーパーで生味噌を手に取ると、野菜やきのこ、肉などを一緒に買っていく。味噌屋だけでなく、農家にも好影響を与えられます。
今は、共働き世帯が多く、食事の準備も大変です。味噌汁だけでも、手づくりして温かさを感じてほしいですね。味噌汁は、野菜を取れる料理のひとつですし、他の料理で余った食材も活用できるので、フードロスにも貢献できると思うんです。
温かい味噌汁をいただくとホッとして、やさしい気持ちにもなります。全国に味噌屋はたくさんありますが、ライバルを蹴落とす、痛めつけるような方法は性に合いません。やさしい世界線で、これからも変わらず味噌をつくり、届け続けていきます。
信州山万味噌オンラインショップ
https://www.yamamanmiso.jp/shopping.html
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